研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、労働組織において女性人材の育成を阻んでいる諸要因を探求し、これを変革しうる諸条件を解明しようとするところにおかれている。そのために第一には、労働組織におけるジェンダー関係の歴史的変動を支える要因解析と、第二にはその現状分析という二本の柱をたて、製造業、百貨店、総合スーパーの女性活用に着目し、インタビュー調査を中心とする資料収集とその分析を行った。本研究を通じて明らかにされたのは第一に、歴史的には、第二次世界大戦後の高度成長期のリーディングインダストリーのひとつである製造業をみる限りでは、若年労働力不足から女性労働者の勤続化傾向は歓迎されていたが、1970年代にいたって、大きな転機が訪れた。すなわち女性若年層の内部育成が放棄され、既婚女性のパートタイマーとしての再就職受け入れに拍車がかけられていくのである。こうして構築された女性労働体制が、ごく最近にいたるまでの日本の女性労働のあり方を強く規定しており、女性人材の育成を阻んできたことが明らかにされた。第二に、1990年代以降の長引く不況下で、一方では人件費コスト削減のためにパートの戦力化がはかられ、女性正社員の契約社員化などの推進がみられたが、不況の底をくぐりぬけた昨今では、団塊世代の労働市場からの大量退出という労働市場条件に後押しされるかたちで、女性人材の活用にあらためて目が向けられるようになった。これは一過性のものとは考えにくい条件がそろっており、その意味では現代は、第一でみた歴史的構築物としての女性労働体制がどのように打破されることになるのかを見届ける重大なターニングポイントにあることが明らかである。
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