研究課題/領域番号 |
16520004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学・倫理学
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
服部 健司 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90312884)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2005年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 予防医学 / 健康 / 自律 / パターナリズム / 義務 |
研究概要 |
歴史的にみてかつて今日ほど平均寿命が延び、健康を享受しえた時代はなかった。だがなおも、人々の健康への関心が煽りたてられ、自分の健康を保持増進することが各人の義務であることが公言され、ついには法の条文の中に盛りこまれるまでに至ったことは、逆説的である。こうした今日的状況は、ヘルシズムと称されている。すなわちヘルシズムとは、「個人の幸福を定義する上で、またその実現において、個人の健康を第一級の重点事項」とみなす立場(Crawford)、ないし、「健康それ自体を新しい道徳の中心に位置づけ、基本的な徳目の高みにまで引き上げようとする」立場(Minkler)である。つまり、健康状態はその人の道徳性、自己統御する自律的な意思の強さの鏡にほかならず、ここから、「誰もが自分の健康を最大化するように努めて生きるべきだ」という命法が導き出される。また不安を煽りつつ、健康のための方法論を提供する予防医学は擬似宗教化してきた。この擬似宗教にあって、病気は自虐の果ての罪深さの証左である。こうして日常生活の医療化と保健の道徳化が交差するところに疾病の自己責任論が浮上する。だが、この論が成立するためには、かなりの条件が満たされることが必要である。健康を増進する義務は本当にあるのだろうか。その義務はむしろ国家の側にある。だがしかし、それは、パターナリズム的に国民を健康に駆り立てるという仕方においてではない。そうではなくて、環境を保全すること、食や住居の安全を確保すること、医療へのアクセスをより容易にすること、医学や保健福祉の研究と教育を充実させることが先立つだろう。そして、これら自体、この国ではまだ道半ばのように思われる。
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