研究課題
基盤研究(C)
1.本研究は、仁斎が注釈に際して批判的対象とした朱子『中庸章句』と対比しながら、既に翻刻済みの第一本から元禄七年校本に至る五種類の『中庸発揮』稿本における仁斎の注釈の変遷を跡づけ、そこに彼独自の思想形成がどのように展開していったのかを明らかにしようとするものである。まず研究初年度目を中心に、性・道・教という基礎概念の相互関係と、「中庸」概念の特殊性に関する考察を行い、ついで二年度目は「誠」概念の形成過程に関する考察を行った。さらに研究最終年度は、上記の初年度及び二年度に得られた知見に基づき、本研究の目的である『中庸』理解に見られる伊藤仁斎の倫理思想を総合的に考察した。新たに得られた知見として、主として以下の五点を挙げることができる。(1)仁斎学の基本的骨格はいわゆる本体一修為構造に求めることができるが、注釈の変遷はまさにそうした学の基本的骨格の形成過程として跡づけることができる。(2)(1)の具体相として、「誠」概念の「天道」からの分離に伴う「人倫日用」としての「(人)道」の突出と、独自の「中庸」概念の形成を指摘することができる。(3)また「天」の規範性から「性」が分離され、そのことにより「性」が四端を内実とするものへと特化されていくこと。(4)「教」の内容が朱子学的な「戒慎恐懼」からの離脱し、独自の修為論へと展開していくこと。(5)以上の諸項目に伴う道・性・教の相互関係の変化、特に「道」と「性」の相対的分離。2.また研究最終年度は、こうした諸点の解明と同時に、今後の研究に資するため、これまで小注を除いた形でしか刊行されてこなかった『中庸発揮』全文について、仁斎生前の最終形態を示す元禄七年本校訂文を底本として、書き下しとともに現代語訳を行った
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『名誉と正義の位置づけを指標とした比較社会論の展開』平成16-18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書
ページ: 56-66
Reserch Projeco, Grant-in-Aid for Scientific Reserch (Honor and Justice, Comparative Studies on Social Values) 2004-6,16520063
論集(三重大学人文学部哲学思想学系・教育学部哲学倫理学教室編) 12
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Ronshu vol. 12
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