研究課題/領域番号 |
16520018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学・倫理学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川添 信介 京都大学, 文学研究科, 教授 (90177692)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2006年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2005年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2004年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | トマス・アクィナス / 『対異教徒大全』 / イスラーム哲学 / アヴェロエス / 知性単一説 / スコラ学 / イスラーム思想 / アヴィケンナ / アリストテレス / 心身問題 / 人間論 / アヴィセンナ |
研究概要 |
本研究はさしあたりは純粋に哲学史上の問題、すなわち、西欧盛期スコラ学の代表的学者であるトマス・アクィナスの中期の著作『対異教徒大全』に焦点を定めて、そこに看取できるイスラーム思想の影響がどのようなものであったのかを探求したものである。アリストテレスを中心とする古代ギリシア哲学の受容という点では先行していたイスラーム圏の諸哲学者から、西欧のスコラ学は決定的な影響を受けていた。この歴史的事情は、独創的な神学者・哲学者とされるアクィナスにあっても変わらないことは本研究においても確認された。とくに、人間の魂の存在論的位置づけに関する論点においては、アリストテレスの『魂について』のテキスト読解そのもの、それの多様な解釈の歴史の理解、そしてアヴェロエスによる「知性単一説」と呼ばれる立場への批判にいたるまで、アクィナスはイスラーム哲学との関係を抜きにして歴史的探求は不可能である。本研究はその詳細な歴史的影響関係をたどることによって、西洋中世哲学史研究に一定の貢献をなしえたものと考えている。 しかし、哲学史の研究は過去の人物の考えたことについて単に確認することではないはずである。過去の人物と「ともに考えること」でもある。アクィナスはイスラーム圏における魂あるいは人間の理解のうちの何に共感し、何を排斥したのかを学ぶことは、学ぶ者自身が魂あるいは人間について自己の立場を吟味し直すことでもある。「人間とは何か」とは哲学の中心問題、というより哲学の究極の問いであり、このことは現代においても変わらない。このような巨大な問いに出来合いの安易な答えがあるはずもないが、だからこそ過去の哲学者たちの真摯な試みに学びながら、ともに思索を重ねる他はないのである。本研究はこのように歴史的研究であるとともに、人間とは何かを問う哲学的試みでもあったのである。
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