研究課題
基盤研究(C)
ユタ(カミンチュ)等に見られる沖縄の民間信仰においては、病院で患者が亡くなると身体を離れた霊魂(マブイ)が亡くなった病室を離れられずにいることがあるとされ、そのマブイをグソー(後生、あの世)に導く儀礼をヌジファという。インタビューを行ったあるユタは、病院におけるヌジファのやり方として、亡くなった病室でユチン(四隅)から線香やサンでユリー(霊魂)をとり、遺体の胸のあたり、懐に入れてあげてそのまま病室から運び出し、火葬に付し墓に納める(導く)と述べている。そのようなヌジファは亡くなった人(マブイ)のために行うものであるが、しかし同時に実は遺族の悲しみ(悲嘆)に対する慰め(グリーフケア)の意味があると言える。というのは、遺族は死者のマブイが迷うことなくグソーに行き、落ち着いたということを知れば、安堵するからである。、遺族に対するグリーフケアの重要性は、ホスピス・緩和ケアにおいて強調されるところである。ヌジファは死後のあり方が関わるという意味では、さらに遺族にとってはスピリチュアルケアという面もあることになる。ところで、グリーフケアやスピリチュアルケアにおいては、一般的で基本的な方法を踏まえることはもちろん重要であるが、同時に地域の文化的特性、精神的風土を考慮する必要がある。したがって、沖縄においても要望する遺族には、病院においてもヌジファが認められるべきであろう。ただ、例えば次の患者が入院しているベッドのそばで、前の患者(マブイ)に対するヌジファを行う等、やり方によってはヌジファは他の患者や病院に迷惑をかけることにもなる。したがって、病院におけるヌジファは、要望する遺族には基本的に認めてあげるべきであると言えるが、しかしそれは他の患者や病院に迷惑とならない範囲で行うべきであることになるだろう。
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Minikomi, Akademischer Arbeitskreis Japan 73(印刷中)
Minikomi, Akademischer Arbeitskreis Japan 73
琉球大学法文学部人間科学科紀要「人間科学」 16
ページ: 1-19
120001643565
HUMAN SCIENCES, Bulletin of the Faculty of Law and Letters of the University of the Ryukyus, Department of Human Sciences No.16
人間科学(琉球大学法文学部人間科学科紀要) 16号