研究課題/領域番号 |
16520030
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
哲学・倫理学
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2006年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | ケア / 責任 / 正義 / 倫理学 / 未来世代 / 近代批判 / リベラリズム / 生 |
研究概要 |
「ケア・責任・正義の相補的連関に関する倫理学的研究」と題する本研究は、キャロル・ギリガンの提唱した「ケアの倫理」とハンス・ヨナスの提唱した「責任原理」を主題的にとりあげ、ギリガンがケアの倫理と対置した正義や権利を基底とする倫理に立脚する論者からの批判、(正義や権利を基底とする倫理のひとつである)討議倫理学によるヨナス批判をそれぞれの理論と対比し、それを通じて、ケア・責任・正義の関係を探究したものである。本研究のアプローチの新しさは、従来、英米圏とドイツ、政治哲学と形而上学・自然哲学というふうに受容された地域と分野の違いから別個にしか論じられてこなかった二つの倫理理論を、正義と権利を基底とする倫理理論と対比するという一つの視点で論じた点にある。それによって、正義と権利を基底とする倫理が平等で自律した人間像に依拠するのに対して、二つの理論は人間関係を不均衡な力関係を含むものとして捉え、それに対処するためにケアや責任を基底とする倫理を展開している点を明確に描き出した。二つの理論が子どもや未来世代との関係を倫理の範型とみるのはそのためで、その根底には生のうつろいやすさ、身体の傷つきやすさへの鋭敏な認識がある。近代の正統的な倫理理論、したがってまた正義の倫理を代表するカントとは逆に、二つの理論は、本体としての人間ではなくすでに現象としての人間もまた尊重せねばならないという主張を共有する。このほか本研究は、ケアの倫理については、しばしば主張されるケアと正義の統合を論じる以前に、統合の可能性ないし不可能性を規範レベル、基礎づけレベル、メタレベルに分けて論じるべきだと主張し、責任原理については、ヨナスが現代においてただちに否定されがちな形而上学へのコミットをなぜしたのかという点の解明を進めた。これらは、各々の理論を正義の倫理と対比する本研究のアプローチのもとで明確にとりだせた成果である。
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