研究概要 |
最古の『リグヴェーダ』(前1200年頃)から古典サンスクリットに至る「古インドアーリヤ語」の重要語根を選び,文献に現れる動詞語形を原典に基づいて検証の上,語形一覧に整え,語根や語幹に見られる由来と原理,あるいは各語形,出典箇所に関する注記を付して発表することを目的とした。3年間でできる限りの数の動詞を扱うべく目指した。 これまでに蓄積してきた資料(ファイル16冊分)の整理点検,最近の研究書,論文の収集点検と並行して,比較的規模の大きい重要な動詞を中心に,活用語形と派生形の一覧を作成した。原稿の完成には専門知識をもつ若手研究者の援助を仰いだ。最終的には大小取り混ぜて71個の動詞について手書き原稿を完成させ,一部は入力を済ませた。入力を済ませたものの中から,重要語根を含む12個の動詞を選んで,見本として成果報告書に付した:^1ga 'einen Schritt machen, gehen',^2ga 'singen',^1da 'geben',^2da '(Pflenzen) schneiden, mahen',^3da 'teilen',^4da 'binden',^5da 'jdm.nachstellen, ihme etw.anhaben, ihm als Feind anhaben',^1dha'hinstellen, bestimmen',^2dha 'saugen',^1ya 'dahinziehen, fahren',^2ya 'bitten, fordern',^3ya 'angreifen, rachen'(?)。研究計画中に出版までは果たせなかったので,今後,原稿を随時出版してゆきたい。 本研究者は動詞研究を軸に,インド・ヨーロッパ語比較言語学を基盤に据えて,多面的な視点から,「ヴェーダ」,「アヴェスタ」の文献学的研究に取り組んでいる。本助成期間中に発表した10編の論文は何らかの形で動詞研究の副産物,または,動詞研究に前提とされる作業と見なしうる性格をもっている。
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