研究課題
基盤研究(C)
いうまでもなく釈迦は紀元前6〜5世紀ごろインドに実在し、仏教の教えを最初に説いた入物である。仏教の教義や美術は、インドからさまざまなルートを通って日本に到達し、さまざまな分野で重要な役割を果たしてきた。この研究では、あらためて仏教美術における釈迦の表し方に注目し、特に絵画のなかに表された釈迦の姿(釈迦の図像)を見ていこうとするものである。釈迦の図像を見てみると、釈迦がどのような思想的背景に基づいて表されたのかが判明し、我々日本入にとって釈迦がどのような存在であったかがより具体的に明らかになると予想される。日本においては、釈迦の姿が表された絵画として、釈迦の姿を直接描いた釈迦像・釈迦三尊像の類、また釈迦の伝記を直接表した仏伝図(釈迦八相図)・涅槃図・浬槃変相図・仏伝涅槃図(八相涅槃図)などが挙げられる。こうした直接的主題は、釈迦という人物に対する関心と信仰の深さがよく現れているであろう。釈迦の姿はこうした直接的主題だけでなく、法華経や観無量寿経などの経説を表した絵画、密教や浄土教の教義に基づいた絵画、本地垂迹説による垂迹画などさまざまにある。これらの絵画においては、釈迦が、仏教の教義を説いていたり、極楽浄土を希求する男女を導いたり、六道で苦しむ人々を救済したり、密教修法の本尊であったり、主たる神々の本地であったりするなど、まさにわれわれ人間にとって最も身近な存在であり、阿弥陀や薬師など他の仏菩薩たちを超える最上のアドヴァイザーという姿がみえてくる。中国・朝鮮半島の美術作品に見られる釈迦の姿も、日本の状況を考えるときに有効であり、日本の作例との比較を通して東アジア全体における釈迦の表現のあり方や位置づけも同時に明らかになると思われる。しかしながら今回は調査・分析とも不十分であったので、今後の課題としたい。釈迦はもとはわれわれと同じ人間であり、他の仏菩薩とは大きく異なっている。釈迦の図像の研究は、当たり前のことでもあるが、われわれ人間にとっての釈迦の役割や位置づけを明らかにするためには不可欠であり、重要で意義深いテーマといえる。今後も継続して追求していきたい。
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(未定)