研究課題
基盤研究(C)
本研究では、マージェリーが活動した1370年頃から口述筆記を行った1430年代のヨーロッパにおける宗教界の論争や諸問題をあぶり出し,マージェリーがいかに危機に対処したかを考えた。まず、反ロラード・キャンペーンのもと、アランデルが発布したConstitutions(1409)が英語の宗教書の製作に与えた影響を考察した。次に、聖ブリジットの『啓示』の正統性が疑問視され、列聖問題が再燃したコンスタンツ公会議(1414-17)とバーゼル公会議(1431-49)を、「諸霊の識別」の問題をジェンダーの観点から検討した。さらに、コンスタンツでも審議されたロラード問題をマージェリーの自伝的記述に検証し、周縁の女性が自叙伝の口述をした状況を検討した。その結果、マージェリーの諸霊の識別は、公会議での神学論争の直接の産物ではないものの、同書に表出する諸霊の識別は、二つの公会議でのブリジッ〓の諸問題との関係を見ることで浮き彫りになった。換言すると、本研究を通して、自らの霊的〓験の正統性を示すために腐心したマージェリーと筆記者の意図を垣間見ることができ、諸霊の〓別が間接的に同書の製作過程に影響を与えていることが明らかとなった。
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