研究概要 |
本研究の目的は、コンピュータを利用し、『カンタベリー物語』について、2つの代表的な写本と2つの代表的な刊本を取り上げ、4つのテクストを対応させたコンコーダンスを作成し、Chaucerの言語研究及びtextual criticismに貢献することである。写本は代表的な2写本、Hengwrt(以下、Hg)写本とEllesmere(以下、El)写本を、そして刊本は、Hgに依拠したN.Blake(1980)とElに依拠したBenson(1987)を取り上げた。 平成17年度においては、The Miller's TaleとThe Reeve's Taleに関して、Hg, El写本及び刊本Blake(1980),Benson(1987)に基づいて、包括的な校合コンコーダンスを完成させた。平成16年度に作成したものに、句読点の違いを含めたことで、テクスト生成及び編集過程を一層客観的・網羅的に示すことが可能になった。Linne Mooney(2004)がHg, El写本の写字生、Adam Pynkhurstを同定したこともあって、両写本の特性の記述は今大きな議論を呼んでいる。この学会動向に対しても有益な情報を提供できると考えている。 上記のコンコーダンスは、Stubbs(2000)のCD-ROM及び関連データに大きく依拠している。国際的連携の一環として行われた。平成14年度のGeneral Prologueのコンコーダンス(Jimura, Nakao, Matsuo, Blake, and Stubbs(2002))、平成15年度のThe Knight's Taleのコンコーダンス及び両写本のワードペア網羅的リストの作成(Nakao, et al.(2004)を参照)に続くものである。2写本と2刊本の言語特徴を網羅的に検出できることで、チョーサーの言語の研究を大きく発展させるものと期待できる
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