1.19世紀アメリカ・ピューリタニズムの変容の態様を、エミリ・ディキンスンを中心にして捉えるために、難解な原典である彼女の詩を正確に読み訳すことは当然のこととして、彼女の書き送った書簡の翻訳が大事と考え、その翻訳を継続して来た。それらはディキンスンが詩作の指導を仰いだ評論家のT.W.Higginsonへの手紙、ディキンスンの親友であった新聞社主筆Samuel Bowlesへの手紙、マサチューセッツ最高裁判事Otis Lordへの手紙、それに身内や友人達への手紙等である。 2.わが国においては、ディキンスン研究書の翻訳がほとんど出版されていないことに鑑み、標準的なディキンスン研究書であるPaul FerlazzoのEmily Dickinson(Twayne)の翻訳を開始し、これまでも順次紀要等に発表して来た。そしてこれは既に全訳を完成した。 3.ディキンスンと同時代の作家であるホーソーンの処女作Fanshaweについてそのアメリカ性について小論を発表し、Henry Jamesの代表作The Turn of the Screwに見られる抑圧された性とピューリタニズムの関係について論じた。また日本英文学会九州支部大会(2003.10)でホーソーンについてのシンポを主宰した。 4.ディキンスンの父と兄が理事を務めていた当時のアマスト大学に学んだ内村鑑三の留学時代(ディキンスンの晩年と重なる)の大学時代のカリキュラム・授業内容等について鑑三の書簡・体験記等を点検し、当時のアマスト大学の教育が自然科学・語学教育と同時に、ピューリタニズム的宗教面を重視した独特のものであったこと、それらが鑑三とディキンスンの考え方に強い影響を与えたことを確認した。
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