研究概要 |
ドイツでは反ユダヤ主義者は1950年以降減少してきた(1998年のForsa世論調査では5人に1人が反ユダヤ主義者)。ところが最近、状況が変わったことが指摘されている。2002年から2005年の「憲法擁護報告書」によると反ユダヤ主義暴力事件が一貫して増加している。(2001:18件、2002:28件、2003:35件、2004:37,2005:49件)。これはドイツに住むユダヤ人に不安を与えている。ドイツのユダヤ人中央評議会議長(ホロコーストの生存者)はドイツの極右主義の展開をみると第三帝国のナチを思い出すと語っている。 今日、古典的な反ユダヤ主義は依然として存在し、折りに触れて出現するが、新しい反ユダヤ主義の台頭が顕著である。つまり、シオニズムやイスラエルの政治に対する批判と結びついた反ユダヤ主義である。極右は特に中東紛争を利用して反ユダヤ主義を煽りたてている。イスラエルのやり方をホロコーストとして非難する声も無視しがたい。 このような状況の中でドイツをはじめヨーロッパ諸国は反ユダヤ主義との対決を強めている。2004年、ベルリンで開催されたOSCEの会議では、反ユダヤ主義との対決への決意を各国政府の代表が表明し、具体的対応をとることを確認した。 東欧諸国でも反ユダヤ主義の台頭がある。ハンガリーの状況を調査する過程で、1989年のベルリンの壁崩壊の先駆けともなったハンガリーとオーストリアの国境で開かれた集会(「ヨーロッパ・ピクニック」)を誰が企画・組織したか、の問題に取り組むことになった。その結果、真相に関していまだ闇の部分が多々あること、そしてこれは反ユダヤ主義の台頭と深く関係していることが判明した。
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