研究課題/領域番号 |
16520193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
ヨーロッパ語系文学
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
清水 一嘉 愛知大学, 文学部, 教授 (70312105)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2006年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2004年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 地方の書籍業 / 新聞の発行 / エイジェント / ニューズボーイ / ブックセラー / 流通ネットワーク / ニューカースル・アポン・タイン / チャップブックとバラッド / 18世紀イギリスの出版 / ニューカースル / 出版流通 / チャップブック / バラッド / 一過性印刷物 / 地方新聞 / 新聞エイジェント / アニック / 地方出版 / 奥付(コロフォン) / ブックス・イン・プリント / 出版者カタログ / 出版趣意書 / 「本の歴史」研究 / 出版 / 出版産業 / 流通 / 読者 / トマス・ビューイック |
研究概要 |
この研究は表題にもあるように、18,19世紀のイギリスにおける出版流通ネットワークについて考察したものである。私の考えでは、この研究に当たって何よりも欠かすことのできないのが地方における新聞の発行とその流通の実態である。なぜならば、新聞の発行人は新聞を発行するだけではなく、新聞の流通と深くかかわっていたからである。かれらは複数のエイジェントと契約を結び、つぎにそのエイジェントはニューズボーイと契約を結ぶ。そしてニューズボーイが各家庭の読者に新聞をとどけたのである。これが地方の新聞の流通システムであり、ここで注目すべきことはこの流通システムをロンドンの出版者がうまく利用し彼等の出版物を地方に普及させたという点である。 つぎに注目すべき点は、先に述べた新聞のエイジェントはそれぞれが同時にブックセラーであったということである。ブックセラーはもちろん本を売るのが商売の人間であるから、ロンドンの出版者のエイジェントになるのは当然のことといってよかろう。ところが、ここでもうひとつ興味深いのはブックセラーは同時に本の出版を兼ねていたという事実である。出版する出版物の数は少なかったが、かれらは本以外の印刷物、たとえばチャップブック、バラッド、アルマナック等の印刷でロンドンの出版者をしのぐ勢いであった。というのは、これらにたいする地方での需要が急速に増大するにつれて、ロンドンの出版者ではまかないきれなくなり、その気に乗じて地方の印刷業者がこの分野で勢いを増してきたのである。そのような地方のなかでもとくにチャップブック印刷で注目されたのがイギリス北部の文化都市ニューカースル・アポン・タインである。この町の重要性についてはつとに指摘されながら、最近に至るまで深く調査研究されることがなかった。その点私のこの研究によってわずかながらでもそのすがたが明らかになったとするなら望外の幸せである(ただしこれは今後に残された課題でもある)。 忘れてはならないのは、地方の印刷業者の仕事はチャップブックやバラッドの印刷だけでなく、地方生活に欠かせない一過性の印刷物、たとえばビラ、ポスター、事務用の用紙等を手がけたことである。ともあれ、18世紀から19世紀にかけての地方出版は、依然としても出版の中心はロンドンにありながら、地方なしにはもはやロンドンの出版も成り立たず、両者は相互依存の関係を強めていった。そしてその中心にあって重要な機能をはたしたのが新聞発行人でありそのエイジェントであったことはさきに述べた通りである。
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