研究概要 |
初年度の平成16年度は,マイノリティとしての長い歴史を持つ「ユダヤ人」の背景を知るべく、ヨーロッパ諸国のユダヤ人のコミュニティーセンターが文化発信基地として起動している様を調査した。結論としては、一民族のアイデンティティとしてだけではなく戦争という共通体験を通して共有の意識として認識されつつあるということだ。「日系強制収容所」体験者としてアジア系研究者と成った筆者は、改めて歴史研究上、体験者の証言と民族を超えた連帯の重要性を痛感した。具体的な研究成果としては、4月に大学院研究者セミナーで、7月ニュージーランドのアメリカ学会で各々異なった論文(いずれも英文)を口頭発表した。また、3月末、学会誌に論文「日系人の中の周辺性:日本に傾倒した二世たち」が掲載された。 平成17年度は、前年度からのテーマであるトランスナショナルなスタンスがコミュニティ活動にどう影響しているかを研究焦点とした。その成果については、6月韓国で世界女性学会議で発表し、11月アメリカブラウン大学でのセミナーで特別講演した。前者の論文は、Gender,Culture,and Creativityの学会誌に掲載された。(今年度後期は所属大学から自由研究員としてアメリカの諸大学の図書館や研究室を活用し研究を遂行した。) 前年度申請が承認され平成19年度を辞退することになったので、平成18年度が本課題の最終年となった。7月に強制所巡礼に参加、収容者のコミュニティ形成を実体験したことでアメリカ政府からの新資料を入手することに成功した。これらのドキュメントの解読と分析を、現実に直接抑留者たちにインタビュー、オーラルヒストリーの聞き取りをする等の作業に従事した.結果は、年度末までにこれらを論文としてまとめ、『強制収容と文化変容-日系二世・三世の日本とアメリカ』として入稿した。
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