研究概要 |
本研究プロジェクトの目標は,南宋の大思想家・朱熹(1130〜1200)の絶句をすべて解読し,関連する諸問題についての考察を加えて,その成果を公刊することにある。今日,科学研究費補助金の交代を受けた期間は,その長期にわたる活動の一部を形成するものであった。 具体的には『朱文公文集』巻四に収める32首,巻五に収める同じく32首の絶句の一々につき,校異・語釈・通釈・解題・補説を施した。「解題」では作詩当時の作者の境遇や,題材となっている事物について考察を加え,「補説」では,内容上の問題点のうち他の項目に収め切れないものを取り上げた。また,この4年間において,研究代表者・研究分担者・研究協力者は,関連テーマをめぐる論文の作成につとめた(それらは冊子体「研究成果報告書」〔様式C-18〕に収載)。このようにして朱熹の絶句の研究を進めることは, 1.絶句という様式の発展過程の重要な一面を明らかにする。 2.朱熹の思想の特色を探るための,新しい視点を提供する。 この二点において意義があり,4年間の作業・研究の結果,その一部が実現されたと考える。 さらに,本研究の方法-作品自体の解読と,そこから顕在化する諸問題の考究-は,近年の,新しい方法論の導入やフィールドワークに偏向している感のある風潮に対し,一定のアンチテーゼの意味をもっているとも言えるであろう。
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