研究概要 |
本研究の目標は,西ゲルマン語に属する現代英語,現代ドイツ語,現代オランダ語のダイクシスの考察であった。具体的には次の三つの目標を設定した。1)個別言語のダイクシスの精密な分析,記述。2)三言語の比較対照。3)ダイクシス概念の理論的整備。 最初の二つの目標に関しては,主にgo型,come型という移動動詞のダイクシス性を取り上げ考察した。用法に関してはgo型の動詞ではオランダ語は英語に近く,come型の動詞ではオランダ語はドイツ語に近いことをみた。英語のcome,ドイツ語のkommenに関してはダイクシスに関するその他の具体的な使用条件も考察した。さらに,ドイツ語に関しては引用におけるダイクシスの問題を取り上げ,日本語との対照で考察した。 三番目の目標に関しては,ダイクシスという概念自体はどの様に捉えられるかという問題,原点転移の問題を主に考察した。ダイクシス概念に関しては,言語を用いた指し示しという捉え方を基本に原点との関連で規定した。原点転移に関しては,原点が置かれる側の項が無標か有標かという区別だけではなく,原点を置く主体の側の項が無標か有標かという区別が必要であることを述べ,従来の原点転移の概念を精密化した。また,時間概念をどの様に把握するかが時間表現とどの様に関連するのかを考察し,原点転移に関連する自由間接話法の問題を日本語フィクションを対象として考察した。
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