研究課題
基盤研究(C)
本研究は、チベット・ビルマ系言語に属するキナウル語の資料を現地調査によって収集し、記述的研究を行うものである。本研究に先行する研究期間(2000年度〜2003年度)には、キナウル語文法の全体像を概観するために、音韻体系、動詞形態論、格標識などについて簡易的な記述を行った。これを受け、本研究の期間中は、主として動詞形態論と格標識についてより詳しい記述を行った。まず、自他対応する動詞の資料を収集した。この対応関係は、多くのチベット・ビルマ系言語で現れることが知られている。キナウル語ではすでに崩れてしまったと言われているが、報告者の調査によれば、20以上の対が存在する。この対応関係の総合的な分析は今後の課題である。次に、動詞接尾辞のうち、いわゆる中動態にかかわる接辞-siを調査、分析した。この接辞は、再帰、相互、集合的複数、自動詞化などを表す。また、興味深いことに、関係節の動詞に付加されて、先行詞が、関係節の動詞の主語以外の項であることや、または複数の主語であることなどを示す。すなわち、-siの機能負担量は高いと言える。さらに、相aspectの表現形式として、重複と動詞接尾辞-oを観察した。重複は、動作の完了とその結果状態の継続を表す。また、接尾辞-oは、動作が継続していることを表すことがわかった。これに加え、格標識に関する資料を収集した。すでにまとめてあるもののほかにいくつかの新しい用法を採取できた。とくに、能格具格を表す標識が、通路や身体的または心理的状態を表す例や、位置格として使われる形式がいくつかあることがわかった。まだ、いくつかの未解決の点を含んでいるが、それは今後の課題としたい。また、形容詞と副詞に関する資料を少量収集した。他の多くのチベット・ビルマ諸語と違い、キナウル語は名詞的であることがわかってきた。
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Roland Bielmeier and Felix Hallereds, Linguistics of the Hi-malayas and Beyond, Berlin:Mouton de Gruyter
ページ: 341-354
Linguistics of the Himalayas and Beyond, Berlin: Mouton de Gruyter
ページ: 341-54
Roland Bielmeier and Felix Haller eds., Linguistics of the Hi-malayas and Beyond, Berlin: Mouton de Gruyter