研究課題
基盤研究(C)
本研究では日本在住の英語母語話者が出身国以外の英語方言や非英語母語話者の英語と接触することにより、言語特性にどのような影響を受け、どのようなバリエーションと変化が生じるかを社会言語学的に調査した。英国、米国、ニュージーランド出身の英語母語話者から、来日直後と約1年後の2度にわたって収集した自然談話を比較し、様々な母音や子音の変異音の使用率とその変化を調べた。また発音の変化とそれぞれの話者の日本でのソーシャルネットワークとの相関関係を分析した。データを比較した結果、1年後の発音に様々な変化が観察されたが、変化の種類や度合いは話者により差があった。それらの変化の一部と、各話者が日本で築いた様々なソーシャルネットの強さの間に以下のような相関関係が見られた。(1)同じ出身国の英語母語話者と強いソーシャルネットワークを持つ話者は、自国の英語方言でよく使用される変異音の使用率を上昇させる傾向が強い。あるいは他国の英語方言でよく使用される変異音の使用率を低下させる傾向が強い。(2)出身国の異なる英語方言話者と強いソーシャルネットワークを持つ話者は、他国の英語方言でよく使われる変異音を取り入れたり、その使用率を上昇させる傾向が強い。あるいは自国の英語方言でよく使用される変異音の使用率を低下させる傾向が強い。(3)非英語母語話者と強いネットワークを持つ話者は、非英語母語話者が不慣れな変異音の使用率を低下させる傾向が強い。以上により、方言接触によることばの変化はソーシャルネットワークと強い関わりのあることが明らかになった。
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