研究概要 |
本研究の目的は、英語の談話標識がどのようにして成立してきたかを文法化・語用論化の観点から分析することであり、その方法として、初期近代英語期に関する電子コーパスを用いて通時的に調査を行った。 談話標識の中でも、英語の一人称人称代名詞と発話動詞とのコロケーションに着目し、文法化の視点からの研究を進めた。具体的には、1人称主語と発話動詞が共起している例を、Shakespeare Corpus, Helsinki Corpus, Drama Corpusの3つのコーパスから拾い上げた。統語的な観点から、まず「主語+動詞」の位置を調査し、このパターンが、文中、文末に生起している場合に、語用論標識になりやすいこと、また、疑問文や命令文と共起している場合に文法化されやすいことを明らかにした。Helsinki Corpusを用いた分析では、初期近代英語期のなかで、I期からIII期にかけて次第にこれらのコロケーションが語用論標識となる過程が明らかとなり、文法化が進んでいることを明らかにした。 そのほかに、談話標識のlook YouとI pray youを取り上げて分析を行った。look youにおいては、lookのあとの代名詞に着目し、代名詞ごとに用例を分類し、代名詞と文法化の程度との関連性を調査した。代名詞の中でも、look youが圧倒的に多く、この構文はかなりイディオム化が進んでいることがわかった。I pray youに関しては、初期近代英語コーパスにおいて、I pray youとPray単独の例が多く見られ、意味の漂白化とともに、文法化が進行中であることがわかった。
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