研究概要 |
この研究「ニューカマーの子どもたちと日本社会との相互適応プログラムの開発研究」は,平成16(2004)年度から平成18(2006)年度まで3年間にわたって行ってきたものである。研究代表者・分担者は,それ以前から文部(科学)省の科学研究費により外国にルーツを持った子どもたちの日本社会適応のために日本語教育が何をすべきかについて調査研究を行ってきた。それによって「外国にルーツを持つ子どもの適応は,子どもが日本社会に適応するという一方向の適応ではなく,日本社会側も異質な他者に適応するという双方向の適応でなければならず,そのためには双方の適応能力の開発が不可欠」という仮説がほぼ検証された。そこで,この仮説に基づいて相互適応プログラムの開発することが本研究の目的であった。 3年間で,相互適応プログラムのモデルを示すというところまでは至らなかったが,おおよそ次のようなことが理解された。 1)相互適応には,外国人と日本人との双方の出会いから,共通の目的を持ち協働し成果を得るところまで,双方にとって意味のある活動を行い,かつそこから学び,その学んだことを活動につなげる必要がある。 2)そのために,適切な支援ができるファシリテーター(伴走者)がいることが望まれる。 3)日本人と外国人双方が変わることで日本社会側の変革を起こし,社会の変革が双方の個人の自己変容につながるという循環が漸進的に進む。 4)子どもの問題は,家族や親戚,人的ネットワーク,場合によっては母国の人的ネットワークとの関係で考えてその改善に取り組む必要がある。 5)いわゆる「当事者性」(外国人が自らの力で変わる,変えること)が強く求められる。 以上だが,これらは,特に川崎市の事例から学ぶべきことが多かったと考える。
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