研究概要 |
日本語教育において,「協働」が注目される中,「協働」とは何か,何をもって「協働」と見なすのかを検討するため,協働志向の実践研究の現状を把握すると同時に,実際に授業分析を行うことにより,「協働」の実態を知ることと分析方法の可能性を探ることを課題とした。 協働志向の教育実践・実践研究のデータベース(全214件。書誌情報に,活動の種類,扱われる言語技能,対象学習者の日本語レベル,データ収集法,分析法等の情報を付加。)を完成し,そのうちの88件を対象に,扱われる言語技能,学習者の日本語能力レベル,研究に用いられるデータの種類を観点に,傾向分析を行った。 傾向として,扱われる技能は「話す」「書く」が多いこと,日本語能力レベルについては,初級から上級まで様々なレベルで「協働」が取り入れられているが,初級であれば「話す」,上級であれば「書く」が多いことがわかった。また,用いられるデータ収集法はアンケートが最も多い反面,協働の実態を捉えるために複数のタイプのデータが用いられていることも明らかとなった。 また,協働を目指した授業を,教育実践者と研究者が分析した。教育実践者は留学生と日本の高校生との協働を目指した授業を行い,その授業の中でどういった協働が起こったのかを,学習者が書いた「振り返りシート」と授業後のフィードバック時の話し合いの記録をもとに分析した。また,研究者は,教師(日本人)と日本語学習者以外に,日本語学習支援者(日本人)を教室に,協働が目指されている授業の撮影データの文字化資料を対象に,授業分析及びコミュニケーション分析のための手法であるFOCUS(J.F.Fanselowが1970年代に開発)を用いて発話をコード化し,質的な分析を行った。これにより,学習者(外国人),教師(日本人),学習支援者(日本人)が存在する教室において学習者同士の「協働」を目指す場合の課題が浮き彫りとなった。
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