研究概要 |
中学校・高等学校における英語学習者である生徒が,もっとも頻繁に触れる英語のソースは教科書である。そのため,学習者はどのような英語に接触しているのかを調査し,英語教育に対する基礎資料を提供することを試みた。また,学習指導要領の改訂に伴い,旧指導要領下の検定教科書と新指導要領下の検定教科書のいずれかで学習してきた生徒が混在している現状をふまえ,双方の教科書を分析して比較することとした。 そこで,中学校の検定教科書については,旧指導要領における平成8年検定分の21冊(7社×3学年),新指導要領における平成13年検定分の21冊(7社×3学年)を分析の遡上に載せ,本文をレマ化したうえで頻度を分析し,どの語がどの教科書に出ているのかを新旧比較しながら検討した。その結果,指導要領の改訂に伴って必修語彙の制限が緩和されたことにより,各社が特色のある編集をし,したがって教科書間で出現する語彙にかなりの相違があることが明らかとなった。 高等学校の検定教科書については,本研究の目的に照らし,もっとも多くの高校生が履修することとなる「英語I」の科目に焦点を当てた。そして,巻末の新出語彙リストをもとに,32冊の教科書の語彙を分析した。その結果,高等学校においては中学校よりもさらに教科書間で扱う語彙に違いがあり,過半数の教科書で新出語となるような語彙すらほとんどないことが示唆された。 これらの結果から,指導場面においては使用する教科書の語彙特性を十分に把握するとともに,他の教科書では扱われているなど不足すると思われる部分については,適宜学習者に提示して指導することが望ましいと考えられる。
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