研究課題/領域番号 |
16520405
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
西山 克 関西学院大学, 文学部, 教授 (30145825)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2005年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 朝鮮仏教 / 朝鮮王権 / 霊魂薦度儀礼 / 甘露幀 / 瑜伽〓口 / 熊野観心十界図 / 熊野比丘尼 / 翻案 / 瑜伽焔口 / 面然大士 / 施餓鬼 / 豊臣秀吉 / 目連救母説話 / 霊魂薦度 / 朝鮮仏画 / アーナンダ説話 / 変相図 / 通度寺 |
研究概要 |
甘露幀は朝鮮時代の仏教儀礼の場で使用された絵画である。現在、甘露幀の研究は急速に発展している。韓国内では、甘露幀を含む大型図録が相次いで出版され、優れた解説・論文が公表されている。霊魂薦度儀礼の法会で使用される仏画でありながら、民衆の風俗をも描いているため、多様な分野の研究者の興味を引いているのである。日本でも初期甘露幀について服部良男の一連の業績がある。甘露幀を所蔵する寺院(韓国内では通度寺・海印寺・奉恩寺等、日本国内では薬仙寺・朝田寺・光明寺など)を調査しながら、私が強く意識したのは、甘露幀の反民衆的な性格であった。それは甘露幀の下段につけられた画記の記載を読めば分かることである。それによれば、往々にして甘露:槙は朝鮮王・后・世子の長寿を祈って制作されていた。絵画上でも、たとえば光明寺・朝田寺本には、王・王妃と推定される図像が描き込まれている。朝鮮王朝は原則的に儒教を国教として仏教を弾圧したが、霊魂薦度と極楽往生だけは儒教に頼ることができなかった。そのため、仏教の弾圧された朝鮮時代においても、王権の関与する仏画が数多く制作されている。一方で、熊野観心十界図の研究も進展している。特に小栗栖健治が作例の網羅的な調査を行い、幾つかの重要な成果を生み出している。私は、熊野観心十界図は甘露幀の翻案によって成立したと考えている。しかし小栗栖はその考えを疑問視している。その疑いは服部良男によっても共有されている。ただ、彼らの見解には誤解と矛盾がある。私はこの報告書において、甘露幀が東アジア世界で広く行われている瑜伽〓口儀礼の朝鮮バージョンとして成立したこと、瑜伽〓口儀礼の影響は、文禄・慶長の役(甘露幀の略奪)を通じて熊野観心十界図にも及んでいることをあらためて主張した。熊野観心十界図は甘露幀の翻案によって成立した。翻案は、日韓関係を考える際のキータームである。それは矛盾なく異質なものを結びつける。これからも翻案の概念をツールとして日韓の宗教儀礼・宗教絵画の比較検討を行っていきたい。
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