研究課題
基盤研究(C)
本研究は、近代中国における植民地医学の展開とその近代中国の医療・衛生制度への影響を明らかにすることを課題とした。近代中国では、19世紀半ば以後、列国の進出の結果として、租借地・租界などが設定され、多様な植民地医学が展開された。例えば、大連には、ロシアの植民地医学が展開され、その後、租借権の日本への移管によって、日本の植民地医学が接木された。こうした事例には、他に、上海(イギリス植民地医学及びフランス植民地医学の並立)、青島(ドイツ植民地医学)などがある。近代中国は、いわば「植民地医学の展示場」の様相を呈していた。研究手法としては、各地に保存・公開されている一次資料(档案)を検討し、事実確認を行った後に、各地の事例を比較した。その結果、1)植民地医学、特に、近代日本の植民地医学およびその行政化の結果である帝国医療は、台北(台湾)、上海(中国)、哈爾濱・大連(満洲)などにおいて、現地社会を統治するための重要なツールとなっていたこと、2)医療、衛生事業を通じて、いわゆる「植民地的近代性」が強制され、社会制度の近代的な再編が促されたが、同時に、「近代性」の強制と共有を基礎として、植民地統治への批判も展開されるようになったこと、などが明らかになった。従来の研究では、医療・衛生事業は、植民地統治のプラスの部分として評価される場合があった。しかし、本研究が明らかにしたように、植民地統治における医療・衛生事業の制度化は、そうした素朴な評価軸からは帰納されない影響を植民地社会、就中、近代中国に与えていた。などが明らかとなった。
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