研究課題
基盤研究(C)
本研究の課題は清朝の中央官制について、内閣・翰林院・都察院を主たる素材として検討し、これら三機関を中心とした政治現象がいかなる主体によって、いかなる政治的資源に基づき、いかなる過程によって導き出されるのかということを明らかにし、清朝の政治過程における各機関の役割・機能を相互関連的に分析することである。中国における「政治」の持つ意味を歴史的に展望することが可能となる。内閣については、制度的変遷を概述し、その文書行政システムの中の位置づけを行った。清初期において、清朝は皇帝権伸張のため、漢人を利用して明代の制度である内閣制度を導入し、有力な満州人貴族を牽制したが、清中期に至り、内閣から生み出される満州語文書は、満州人政権たることの存在証明として政治的な機能を果たした。都察院については、科道官の政策提案事例の数値化をはかり、その政治的機能のあり方を検討した。結果として、雍正〜乾隆期には政策提案は活発に行われず、嘉慶期以降に科道官の政策提言件数が増大していることが判明した。乾隆期は、科道官は、大きな政治勢力となることはなかった。しかし、嘉慶期以降、官僚の不正等が社会の不安定要因となり、清朝の求心性が低下してくる。そのような中でとった手段の一つが、「民意」をくみあげる、という政治的姿勢であり、それを清朝の政治統合のシンボルとした。また、内閣制度の核となる文書行政システムにおける、各レベルの行政機関における文例集を分析して清代行政の全体像を明らかにし、中央と地方の集権-分権、あるいは融合-分離のあり方を考えた。ただ、文書システム自体からわかることは、政治や行政の一部に過ぎず、現実の政治過程はより人格的なあり方において進行する。清朝の政治史・制度史研究を進めるためには、さらに多用な史料の活用を模索していくことが課題である。
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