研究課題
基盤研究(C)
本研究は、多民族・多宗教が混在した広東珠江デルタ地帯を対象として、儒教化の潮流のなかで、宗族という儒教的な親族組織がどのように形成され、定着したのかを検討することを課題とした。第1に、儒教化の状況を検討した。16世紀の珠江デルタでは、〓族や〓族などの非漢族が大規模な闘争を開始し、加えて里甲制から逸脱した漢族の民衆も反乱のなかに身を投じた結果として、1世紀にも及ぶ動乱の状態がデルタ周辺地域に醸成された。これらの動乱が鎮圧される過程において、明朝及び地元の郷紳が儒教的な社会規範(礼)による秩序形成を進めた結果、デルタ地帯の社会は次第に科挙官僚制を軸とする儒教文化の圏域に組み込まれていった。儒教化の浸透である。第2に、漢族のアイデンティティーの検討である。民族融合が急速に進んだ明代後半の時代において、デルタの人々にとって、彼らの祖先が非漢族ではなく、漢族出身であることをどのように証明するのかが重大な問題となった。デルタの人々は、彼らの祖先が中華文明の発祥の地(中原)から珠〓巷という広東北部の土地に移住し、その珠〓巷からデルタ地帯に再度移住したのだとする伝説(珠〓巷伝説)を採用することにより、自己の家系が正統な漢族の系譜に属すことを証明しようとした。宗族は三代の時代に生み出された宗法を理想として編成される漢族の儒教的な血縁集団であり、何よりも出自の証明が必要とされたのである。第3に、顔俊彦という官僚が記録した判牘『盟水斎存牘』を主な史料として、明朝最末期の珠江デルタにおける宗族の実像を探求した。宗族形成の要となるのは祖先祭祀の場としての宗祠であり、広州城と仏山鎮の両都市を中心として祠堂が発展を遂げたことが明らかになった。また、祠堂を中心とする宗族組織では、宗子と族長を指導者とする体制が成立し、集団の維持、紛争の解決などに大きな役割を果たしたことも裏付けられた。
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