研究概要 |
アメリカ合衆国南部への高齢者の流入はフロリダ州において顕著である,そこで,本研究では,高齢者のフロリダ州への移動パターンをオリジン・デステネーションから明らかにしたうえで,高齢者はどのようにして定住先を選択して住みつくのかという問題にアプローチした.フロリダ州西部に位置するリタイアメント・コミュニティ,サン・シティ・センターに居住する高齢者へのアンケート調査によると,定住の理由として,温暖な気候,次いでフロリダのライフ・スタイル,犯罪の少なさと安全性,生活費の安さ,親類への近さ,近隣の不動産価格,住宅との関係,周囲の風景,健康との関係,教会への近接性を挙げていた.また,同じサン・シティ・センターの住民のライフ・ヒストリーとフロリダ州への移住を聞いたところ,このリタイアメント・コミュニティの住民の多くは,合衆国北東部と中西部から1990年代に前住地の住宅を売却あるいは貸家にして気候の暖かいこの地に移住し,この地では定職がないが,主として年金と社会保障費,そして自己資金によって生活していることが分かった.また、フロリダ州に移住してくる人びとは,決して高額所得者ではなく,一般の給料生活者であったことも明らかになった.彼らは,サン・シティ・センターで自分自身の所得に応じた住宅を購入し,年金と社会保障によってレクリエーション活動を楽しみながら,生活をしている.彼らは,このコミュニティを取り巻くレクリエーション環境や医療施設に満足し,活動できる人びとは積極的に病人の世話,救急車の運転やコミュニティの防犯パトロールなどのボランティア活動を行っている.彼らは,この地で好きなレクリエーションを楽しみ,趣味で同好の人びとと交じり合うのが楽しくて,ここでの生活に満足している.
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