研究概要 |
本研究の目的は,今日,戦後著しい発展を遂げた大都市圏の郊外地域が大きな転換点にあり,それが世代交代とともに顕在化したライフスタイルの多様化に起因しているという認識にもとづき,郊外地域における変遷と変貌の実態を明らかにし,今後の郊外地域の展望を考えるための論点を示すことにある。そのため,東京大都市圏を事例として,郊外地域の社会経済的・人口学的特性の変遷・変貌の実態をとらえるとともに,事例地区の調査を通じて,世代交代にともなう郊外住宅地の維持存続にかかわる問題を把握し,以下に示す認識を得た。 戦後大都市圏に流入した1930〜50年代生まれの第一世代は,ライフイベントを重ねるなかで郊外地域に移動して「持家に住む専業主婦核家族サラリーマン世帯」という典型家族を形成したが,1960年代生まれ以降の第2世代になるとそうした規範的なパターンが影を潜め,郊外地域の人口特性の多様化がすすんでいる。つまり,郊外地域の等質・画一性,規範性が揺らいでおり,その原因として,世代交代にともなう社会階層の変動,第2世代のワーキングスタイルの多様化,および公的主体による住宅供給からの撤退などを指摘がきる。 また,社会階層の再生産や資産保全に成功した郊外住宅地であっても,直系親族への住宅の継承は必ずしも順調に行われず,世代交代期にある住宅地の衰退・消滅の問題が現実味を帯びている。したがって積極的な住民の入れ替わりを促す方策を得ることが,人口減少の時代をむかえるなかで郊外住宅地の将来を考えるうえで不可欠であるとともに,それによって郊外地域め多様化はますます進展することになると思われる。
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