研究概要 |
埼玉県秩父郡、山梨県甲州市域を中心として戦後農村で繰り広げられた生活改善運動について次の二つの視点から調査分析を行った。 1,屋敷内の建物構成、住宅内の構成、設備の変化を具体的に把握する。 2,建築、設備の背景にある農民の意識変化を把握し考察する。 調査地は秩父郡小鹿野町、秩父市、本庄市(旧児玉町)、東京都八王子市、山梨県甲州市(旧塩山市)5箇所であり、調査住宅は10棟であった。調査は聞き取り調査、住宅間取り調査、文献調査の方法で行った。 3カ年の研究の成果として次のような知見を得た。 1,対象地域における昭和20年代の住生活改善は、イロリから竈への変更、養蚕空間の生活空間からの分離が主とした内容であった。住生活改善の実施は地域単位あるいは各家個別で行われ、その動機は行政主導あるいは時代の流行としてなど様々な形があった。 2,生活改善を行う中で合理的な思考が根付く一方で、村の祭祀は変わらず継承された。これは土地と結びついた農業と精神的生活が密接に関係していたためと結論づけた。 3,イロリは採暖、煮炊き、乾燥、集まり、食事の多面的な機能をもつが、住生活改善でイロリの廃止が実施される中で、その場はテーブルを上に置いて食卓として、さらにコタツとして使い続けられた。祭壇、食事、集まりの機能は継承されている。- 4,火の神は「オカマサマ」一つで、イロリが竈に変わっても変化がなく、現在に続いている。これとは別にイロリの自在鉤に祀る炉の神は別に存在したと考えられる。
|