研究課題
基盤研究(C)
本研究ではまず、沖縄県読谷村における戦争体験記録と戦争被害による村落の実態、戦後の村落の復興について社会人類学的調査を実施しモノグラフを作成した。また、戦争の記憶に関連して読谷村在住の戦争証言記録ならびにその伝承方法(シマ方言による戦争体験の記録、民謡他、家族・親族レベルの語り等)を検討した。本研究では、現在の読谷村住民の戦争証言の伝承記録を基礎データ化した。ハワイ沖縄系移民への調査はオアフ島在住の沖縄系クラブをインフォーマントとして戦争の記憶とその認識に関連する聞き取り調査を実施した。またハワイに残る沖縄系移民の戦争関連文献を収集した。これら沖縄県住民とハワイ移民の戦争の記憶に関する認識の比較研究を通じて、個人的な戦争体験の記憶が、その後の個人の居住した社会、文化的背景の中でいかに認識され次世代に伝承されていったのか、その受容過程を分析した。戦争証言の記録に関しては、従来においても歴史的記録ならびに政治史等の観点から分析が実施されてきた。しかしながら、個人の語る戦争体験ならびに記憶の伝承は、その伝承者の生活する社会的、文1化的環境が大きく関与されることが予測される。本研究の意義は、個人的な戦争体験と戦後の復興期の村落の再編についての沖縄県読谷村のモノグラフを作成し、ハワイで<ウチナンチュー>という沖縄帰属意識にまとまる移民の戦争体験、戦争感を比較したことにある。本研究は単に戦争体験の記録にとどまらず、戦争の記憶に関する個人とその後の社会的・文化的環境の比較研究であり、学際的にもこの分野の方法論は整備されていない。
すべて 2006
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明治大学社会科学研究所紀要 第44
ページ: 145-160
Institute of Social Sciences, Meiji University Vo44,No2