研究課題
基盤研究(C)
わが国の従来の学説は、船荷証券の記載事項とその効力との関係を特に意識しないで議論してきているといえる。そして、国際海運法7条1項1号・2号に掲げる記載事項、すなわち運送品の種類、数量、記号について、その性質の相違およびその記載の効力への影響を検討してきていない。報告者は前稿において船荷証券統一条約との比較においてこの点を指摘し、特に運送品の種類の記載を運送品の特定に関する重要な記載であり、これを絶対的記載事項とみる従来の見解を批判した。本研究は、第一に、こうした従前の研究を発展させて、まず運送品の個性に関する記載と数量に関する記載との性質の相違を明らかにすることにより、それぞれの記載の効力への影響を指摘した。ここでは、運送品に関する記載が、現実の運送品の同一性を識別する機能を果たすと同時に、ひとたび不実記載があった場合には、善意の第三者に対しては、この識別機能とは別に運送品引渡債務の内容自体(証券上の運送品といえる)を決定する機能を果たす(国海運9条)ことに着目して、特に後者の場合に各記載事項の性質の差異がいかなる特性を示すかについて考察した。その上で、この総論的研究に関して得られた仮説に基づき、本研究の副題にある各論的研究に取り組んだ。ここでは、(1)不知約款の効力および(2)品違い・空券を発行した運送人の責任について検討を加えた。その結果、荷主詰コンテナの中品に関する記載は運送品を特定するための記載とはいえず、したがって不実記載の場合でも不知約款の助けを借りるまでもなく運送人の証券上の責任は生じないこと、また、品違いとされる種類の不実記載についても、記号等により同一性が識別された運送品を引き渡せば、運送人の証券上の責任は生じないことを仮説として提示して、船荷証券の債権的効力論に新しい視点を提供することができた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
早稲田法学 81・2
ページ: 119-199
Waseda Hogaku Vol.81, No. 2
ページ: 191-199