研究課題
基盤研究(C)
戦後スウェーデンにおける介護サービスは、公的セクターによる一元的な供給が特徴であった。しかし90年代に入り、エーデル改革(高齢者医療福祉改革)を始めとする様々な改革や、1995年のEU加盟を経て、状況は著しく変化した。本研究の目的は、その象徴的な変化の一つである介護サービス供給の多元化の状況を調査し、現状を分析すること、また新たな状況下での自治体の役割について明らかにすることであった。現地調査等では、スウェーデン研究者や自治体職員、福祉活動実践者のネットワークに大きく支えられ、充実した調査を実施することができた。まず10自治体および労働組合へのヒアリング調査や現地での先行研究をもとに、スウェーデンにおける介護サービス供給の多元化の状況を整理分析し、福祉国家レジームの「収斂」現象を指摘した。その一方で、基礎自治体による強力な質の管理、政府による自治体格差の是正、また労働組合を通じた公民の介護労働者の連帯のしくみが存続しており、このことが社民主義福祉国家レジームの「分岐」現象であることを指摘した。さらに申請者はスウェーデンの過疎地と都市部における介護ソーシャルエンタープライズへのヒアリング調査を実施した。過疎地では地域振興策として、一方、都市部では介護事業の民営化の影響により発生したものが多く、両者における介護ソーシャルエンタープライズの設立目的の違いが明らかになった。また都市部の介護ソーシャルエンタープライズも介護サービス供給だけでなく、社会的排除への対応など、複数の社会的貢献を果たしていることが明らかとなった。研究の結果として、90年代以降のスウェーデンには、他国にもみられる介護サービス供給の多元化の動きがみられたものの、その一方で、介護サービスの質の保持に関する自治体の責任や給付適正化における政府の役割が依然として大きいことが確認できた。また自治体以外の新しいサービス供給体として、介護ソーシャルエンタープライズへの期待が高まっていることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (12件)
地域福祉研究(平成18年3月、日本生命済生会) 第34号
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日本比較政治学会第8回研究大会(発表論文)
地域福祉研究(平成18年3月、日本生命済生会) 第34号(印刷中)
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