本研究における最大の成果は、現地調査と文献調査を通して、四川省チベット地区における民族問題と宗教問題の現状を検証したことである。2年間にわたる研究成果の概要を以下に示す。 1.四川省カンゼ州にて、現地調査を実施した。 2004年8月、五明仏学院(四川省セルタ県)にて、中国共産党が行った宗教弾圧事件の調査を実施した。テンジン・ギャムツォ副院長へのインタビューを行った。ヤチェン修行地(四川省ペユル県)にて、カリスマ性を持つ宗教指導者を中心とした修行地の構造を調査した。アチュウ法王へのインタビューを行った。 2.2005年12月、中国国家図書館にて、中国の宗教学・民族学・政治学に関する文献調査を実施した。 3.陳暁東のルポルタージュ「ニンマの紅い輝き」を分析することで、五明仏学院事件の遠因を分析した。 4.中国政府が掲げる民族政策・宗教政策の内容と東チベットにおける実情の相違を明らかにした。 5.デルゲ印経院における政治と宗教の軋轢について、聴き取り調査を行った。 6.インターネット上に構築された、中国人によるチベット仏教の受容状況について調査した。 7.上記の調査に基づき、研究論文を6編執筆した。
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