提携形成モデルの研究を通じて協力ゲームの基礎を明確にすることが基本的な研究プログラムである。BlochやRay&Vohraのアプローチを、展開型ゲームの応用する手始めとして、逐次交渉ゲームを取り上げて、そこでの提携形成パターンを調べた。線形効用のもとでは、提携形成は、各プレイヤーにとって、形成、非形成が無差別なるという、この文脈では自然であるが、交渉理論としては、必ずしも自明ではない結果が得られた。これを、非線形に拡張すると、いわゆる代表交渉(あるいは効用操作)問題が生じる。これを回避するため、提携の再配分に関するコミットメント能力を奪い、事後交渉のみとするケースを分析した。結果は、順序依存の問題をうまく解決できていないが、順序不依存完全均衡が存在する場合には、リスク回避度の意味で低位のプレイヤー達のみ、あるいは、それに加えて、最高位のプレイヤー一人が加わるという形で提携が形成されてゆくパターンが見出された。 この他に、時間構造を入れた形での、協力、非協力ゲーム分析を総合した交渉解理論の成果をまとめ、地球環境問題への応用に関しては、ポスト京都と呼ばれる目下の国際交渉案件に即して途上国参加問題とプロジェクトベースメカニズムの関係への応用可能性の検討を進めた。前者の研究は、協力ゲームの基本としての交渉問題分析を拡張するという意味のみならず、協力構造の時間的視野の限定がもたらす影響という形で、提携概念の拡張ないしは変形を考察する端緒となりうる結果である。後者では、古典的な提携参加問題において、過小で非効率な提携しか形成されないという問題に対して、将来の不確実性が加わる場合のアウトサイダーのインセンティブの分析という応用可能性を示唆するものである。
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