研究概要 |
Alan Woodland教授(シドニー大学、オーストラリア)と共に、2国(自国、外国)、1財、2生産要素(資本、労働)モデルを用いて、資本希少国である外国から資本豊富国である自国へ不法入国する移民、すなわち不法移民の不法入国に関する意思決定並びに不法移民を故意に雇い入れる自国企業の意思決定を、不確実性に関する経済理論を駆使して一般化した。その上で、均衡解の存在の有無並びに自国政府による移民政策(国境検問、雇主処罰)が自国と外国経済に及ぼす効果を、両国の間で資本移動が存在しない場合と存在する場合に分けた上でそれぞれ分析した。 その結果、不法移民が(国境検問という)危険に関して回避的である場合に、複数均衡が存在すること、また、不法移民が危険に関して中立的かもしくは愛好的である場合に、安定的な均衡解が一意的に:存在することが発見された。また、国境検問の強化によって、自国の賃金水準は必ず上昇するが、雇主処罰の強化が自国の賃金に及ぼす効果は、不法移民の危険に対する選好と移民政策の施行水準(不法移民の逮捕率)に因って変化することが確認された。実際に、Papademetriou D. G, B, Lindsay Lowell and D. A Cobb-Clark(1991)の研究では、国境検問による逮捕率は25-75%であるという実証的データが得られた。したがって、不法移民の逮捕率の(広範囲に存在する)其々の水準によって、移民政策が自国の賃金に及ぼす効果を分析することに意義を見出した。これらの分析結果は、国境検問の自国賃金に及ぼす効果を除いて、いずれも不法移民に関する先行研究では得られなかった新しい結果である。 これらの研究成果を、開発経済学に関する国際学術雑誌」Journal of Development Economics(Elsevier, Netherlands)よりWoodland教授との共著で2006年12月に発表した。 参考文献: Papademetriou, D.G., B. Lindsay Lowell and D.A. Cobb-Clark, 1991, Employer sanctions: expectations and early outcomes, Chapter 8. In: M. Fix, Editor, The Paper Curtain: Employer Sanctions' Implementation, Impact, and Reform, The Urban Institute Press, Washington, D.C. (1991), pp. 215-237.
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