研究概要 |
研究期間中に得た主な成果は以下のとおり。 1.代数トポロジーの社会的選択理論への応用 (1)人数が2人,選択肢が3つのケースにおけるアローの不可能性定理が2次元球(円)についてのブラウワーの不動点定理と同値であることを代数トポロジーの手法(ホモロジー群,写像度)で証明した。 (2)アローの不可能性定理とアマルティア・センによるいわゆるリベラルパラドックスを代数トポロジーの手法で分析し,これらがある抽象的な定理の特殊ケースとして表せることを示した。 2.HEXゲームの定理と社会的選択理論 (1)HEXゲームと呼ばれるゲームに必ず勝者が存在するという定理とアローの不可能性定理とがHEXゲームのあるルールのもとで同値であることを示した。 (2)HeXゲームに必ず勝者が存在するという定理とDuggan and Schwartz(2000)による社会的選択対応に関する定理がHEXゲームのあるルールのもとで同値であることを示した。 3.社会的厚生関数・社会的選択関数の計算可能性など (1)無限人口社会における社会的選択関数について構成的数学の観点から検討し,「戦略的に操作不可能な社会的選択関数は独裁者を持つかまたは独裁者を持たない」という言明は構成的数学におけるLPOと同値であるということを示した。 (2)無限人口社会における社会的厚生関数が独裁者を持つか持たないかは決定不可能であり,そのことはTuring機械の停止問題(halting problem)が決定不可能であるということと同値であることを示した。
|