研究概要 |
本研究プロジェクトにおいては,研究実施機関である平成16〜18年度の3年間を通じて,主として,1,ロシア株式会社を対象とした大規模アンケート調査の実施とその諸結果を分析した実証研究の公表,2,外国直接投資の国内企業セクターへの経済的インパクトと念頭に置いたハンガリー企業のリストラクチャリングやガバナンス改革の研究,3,チェコ,ハンガリー,ロシアを中心とした移行諸国企業のガバナンス・メカニズムや経営再建に関する国際比較研究の実施とその研究成果としての英語論文集の出版,をやり遂げることができた。各研究活動分野の概要は以下の通りである。 第1分野については,ロシア国立大学高等経済院の研究スタッフと共に,2005年上半期,製造業・通信業企業全859社を対象としたアンケート調査を64連邦構成主体で実施し,822社から有効回答を得ることができた。その分析結果は,英国,ロシア及び我が国で開催された国際学術コンファレンスや学会の場で報告され,また研究代表者及び研究分担者の研究成果は,『経済研究』,『経済の諸問題』,『ロシア経営学雑誌』,Journal of Economic Surveys等のレフェリー雑誌に発表された。 第2分野に関しては,ハンガリー人研究者や中央政府関係者に対するインタビュー調査や企業訪問の諸結果を基礎に,EU加盟交渉期の外国投資誘致政策,年金ファンドのコーポレート・ガバナンス問題,外国直接投資の企業再建活動に対する経済的インパクトの実証研究を行った。それらの成果は,『スラヴ研究』,Ata-Oeconomica, Hitotsubashi Journal of Economics誌上に発表されている。 第3分野については,平成16年度及び平成17年度に,イタリア,ロシア,チェコ,ハンガリーの研究者らと行った国際共同比較研究の諸成果を編集した学術図書を,英国Palgrave Macmillan社より刊行した。このような形態で移行諸国の企業再建やコーポレート・ガバナンス問題を取り扱った比較研究は国際的にも極めて数が限られており,一定の学術的貢献をもたらすことができたと確信している。
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