研究概要 |
「家族」の形成が逐次選択であることを認識し、(a)個人が18歳から「家族」が最初に崩壊するまで(あるいはサンプル期間の終わりまで)の各年に独身・同棲・結婚の選択をする;(b)説明変数の効果が選択肢および時間ごとに異なる;(c)(分析者には観察不可能な、個人に特殊な)属性の影響を考慮したランダム効果逐次選択モデルを構築し、法的結婚の経済的便益が選択に与える効果を推定した。Nationalongitudinal Survey of Youth(1979年〜2000年)の女性のパネルデータを用いた。独身から結婚、同棲から結婚、同棲から別離、結婚から離婚の移行を正確に把握できること、様々な説明変数をコントロールできること等のメリットがある。外部データを用い、州間・異時点間で異なる法的結婚の経済的便益を捉える説明変数も構築した。モデルのパラメター推定値を用い、独身→独身/同棲/結婚,同棲→同棲/結婚/別離,結婚→結婚/離婚の年間移行確率、及び、長期安定的な狭義の家族形成(「25歳までに法的に結婚し、9年間以上継続」)と長期安定的な広義の家族形成(「25歳までに法的結婚または同棲し、9年間以上継続」)の(累積)確率を予測した。(1)「結婚税」(法的結婚下の所得税と同棲の場合の所得税の差)の効果は小さく、統計的に優位でない、(2)AFDC/TANF給付とMedicaid給付は期安定的な(狭義、広義の)家族形成に対し大きな負の効果を持つ、(3)(過失の立証なしに離婚を可能とする)no fault条項なしの離婚法は長期安定的な(狭義、広義の)家族形成に対し大きな正の効果を持つ、(4)政策では変更が困難な属性(宗教、子供の頃の家族構成,子供の有無)の効果が大きく、これらを相殺する政策は極端なものになることが明らかになった。
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