研究課題
基盤研究(C)
フランスのイル・ド・フランス県を中心に,就労困難層についての現地調査を実施した。調査の重点をパリにおき、フランスにおけるこれらの施策のより具体的な取り組みを明らかにした。他方、フランスに限らず欧州全体においても、欧州連合が主体となって、欧州雇用戦略と社会的排除との闘いの政策のもとで就労困難層に対するもろもろの施策が取り組まれている。今回の調査研究では、この両方を視野に入れて、就労困難層に対する支援のより効果的な取り組みを分析した。日本においては、同様の問題が深刻化するなかで、「自立支援」をキーワードとして一連の政策が実施に移されてきている。もちろん「自立」「自立支援」は当然必要なことであるとはいえ、それが容易でないこと、自立できない状況を生みだした要因に社会経済的なものであることが多いなかでは、あらためて「社会の側」の対応が求められている。欧州で、社会的排除、社会的包摂(フランスでは社会的参入)という概念が1990年代からさかんに使われはじめた背景にはまさにこうした認識が横たわっているのである。ここでは、この社会への包摂(あるいは参入)を、福祉的施策だけでなく就労を通して実現することがめざされている。しかし、重要なのは、この就労への包摂・参入--とくに就労困難な人びとの場合なおさらその実現は困難であるが--をいかなる施策によって実現するかという点である。いわば、ワークフェアへの道が先進諸国で共通なものとなっているが、それをハードな施策によって実現するか、ソフトな施策でもって実現するかについては、大きな隔たりがある。社会的包摂・参入の概念は、より包括的な視点からこの課題に応えようとするものであり、フランスの参入支援施策は一つのモデルであるといえる。
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