研究概要 |
(1)平成16年度は,文献資料をもとに中欧諸国ではEU加盟を契機として日本企業が中欧諸国に集中して進出しているプロセス,背景,問題点を総括した。さらに,チェコにおける経済発展に対外直接投資が与えた寄与度が極めて大きく,今後の課題が,直接投資ブーム後の当該国の経済政策如何であることを包括的に論じた。 (2)平成17年度はチェコに絞り、トヨタとその関連企業を中心に現地にて聞き取り調査を実施した。各企業共通して、日本的経営(トヨタ生産方式)が問題なく浸透していることが指摘できる。また負の面では、チェコ特有の問題として労働者の欠勤率が高いことがあげられる。こうした問題を解決するために、報酬に皆勤手当てを加えるなど工夫をしているが、医療補助金が政府から支給されることがこの問題の原点にあると思われる。 (3)平成18年度はこれまでの研究成果の取りまとめおよび,チェコ以外の移行国の状況把握・比較検討を,主な課題とした。1990年代の企業改革の遅延,私有化の混乱,旧態依然とした旧国営企業改革は,ドイツなどEU諸国を中心とした外資企業の台頭によって,中欧諸国経済はおおむね改善の方向へと向かっていることが判明した。 (4)加えて,目系企業の進出によって日本的生産・経営システムが中欧諸国に移入されており,特にチェコではトヨタおよび関連企業の進出により,トヨタ方式の生産システムが広範囲に移入されている現状分析とその影響について調査した。トヨタシステムは,すりあわせ技術がその存立に不可欠であることから,そのための長期雇用,知識の共有化のための制度構築が重要課題となっている。 (5)しかしながらチェコ以外の中欧諸国に関しては,論文にて分析するまでの資料,データ収集ができず今後の検討課題としたい。またトヨタ,日産などの自動車メーカーが,ロシアにて生産を開始することをかんがみ,今後は中欧だけでなく東欧・ロシアまで研究対象を広げたいと考えている。
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