研究概要 |
平成16-18年度に亘って,以下の研究を行った. 1)生命リスクと統計モデリング 将来死亡率の不確定性が年金財政に与えるリスク(いわゆる「長生きリスク」)の評価に向けて,将来死亡率の予測を行うための統計モデリングを考察した.特に,Lee-Carter法というノンパラメトリック法を拡張したボアソン双線形モデルを取り上げ,我が国の死亡数データに適用した.17年度は特に,Lee-Carter法の拡張として,局所尤度法による平滑化タイプのモデルを開発した.18年度は,ベイズ法に基づく予測モデルの考察を行った. 2)多変量リスク中立確率の推定:多変量派生資産評価への応用 金融と保険が融合していく中で,変額年金のように複数の資産を原資産とする金融・保険商品の評価が求められている.特に,平均オプションやバスケットオプションのような複数の原資産価格に対するオプションを念頭に,共単調性という新たなリスク管理の概念の基礎研究を行った.多変量リスク中立確率が,周辺リスク中立確率とリスク中立コピュラに分解できることに着目し,前者については混合分布モデルによる当てはめを行い,後者についてはディストーションの考え方を利用した同定化を考察した. 3)局所モーメントによるノンパラメトリック法の開発 統計分析に先だって予め集計され,局所モーメントやパーセント点のような形でしか利用できないデータが多い.そのような集計されたデータに対するノンパラメトリツク/パラメトリック統計解析について考察した.16年度は局所モーメントに基づく最尤推定法について考察した.17年度はデータスクワッシング法と呼ばれるデータマイニング技術との関連を局所モーメント法の観点から考察した.それらに基づいて,18年度は「カーネル・データスクワッシング」という新たなデータマイニング技術を提案した.
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