研究課題
基盤研究(C)
助成をうけた研究期間中に、19世紀中葉から20世紀半ばにかけての日本、中国、朝鮮・韓国、台湾等東アジア貿易各国の貿易統計をすべて入力したデータベースを構築した。さらに、この統計を標準国際貿易商品分類(SITC)によって再分類をおこなうとともに、各国間の相互貿易のマトリクス・データベースを作成した。この分析によって、次のような幾つかの新知見を開くことができた。戦前期日本の輸出は例外的な速度で急増したが、それは2つの異なった内容をもっていた。一般の世界市場に対しては、加工度を高めた軽工業品を輸出し、それらは強い競争力を持つにいった。日本の帝国圏では、重工業品を独占的に供給することで、日本資本主義の高度化をはかっていった。朝鮮、台湾は、この日本帝国内市場の膨張によって、輸出市場を確保して経済成長を図るとともに、内部的には輸入代替を進めていた。つまり、日本と台湾・朝鮮は世界市場と帝国内市場を分けて活用することにより、戦後の産業経済のありかたに結びつくような変化を起こしていた。中国のあり方は、このような日本帝国の膨張に強く規定されていた。満洲地域は日本帝国に組み込まれたために、基本的に台湾朝鮮と類似の事態が生じた。他方上海を中心とする華中地域は、日本の政治経済的な圧迫によって、国民経済の形成が妨げられるようになった。これらの複雑な条件が、中国革命とその後の社会主義の内実を規定していった。東アジア貿易に関する本研究によって、従来の認識では全く断絶的に捉えられていた戦前と前後の東アジア社会について、関連性・連続性を考察する材料を提供できた。
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京大経済学会誌『調査と研究』 30号
ページ: 1-22
KYOTO UNIVERSITY ECONOMIC SOCITY, THE RESEARCH AND STUDY No.30
調査と研究(京都大学経済学会編) 30号