研究課題
基盤研究(C)
本研究課題では、大戦後ドイツの占領地域間の分業、1950年代前半までの東西間交易の歴史的源流を探る分析を行った。従来の研究は、東ドイツを「一国経済」として扱い、ライヒ時代の中部ドイツ(戦後の東ドイツ)と戦後の西ドイツ経済との歴史的関係性(ドイツ史の連続面)を看過してきた。本研究では、分裂後の政治対立の中にあって、なぜ東西ドイツ間の取引が続けられたのかを確認した。また、反対に、冷戦が東ドイツにどのようなシステムの成立を要請したのかを検討した(ドイツ史の断絶面)。歴史の連続面からは、戦前からの「ドイツ内の地域間分業」が、第二次世界大戦後の東ドイツの経済構造や貿易を規定したことを確認した。それは東西分断の中でも完全に壊されることはなかった。反面、東西冷戦は、東ドイツ経済を国有化と計画経済の原理で編成する契機を与えた。以後、東ドイツは西ドイツと異なる社会の建設を目指した(東ドイツの特殊性)。以上の連続面と断絶面に関連する研究成果は、本報告書の「研究発表」(次頁:「研究成果報告書」C-19及びC-20に原稿を添付した)に記載した。それ以外の成果(口頭発表)は、次の通り。(1)第54回ドイツ資本主義研究会(2004年12月5日、専修大学)での報告(「ベルリンの壁」以前の東ドイツにおける経済構造 -戦後復興と社会主義化-」)での発表である。戦前と戦後の比較を試みる前提として、労働力事情(人口動態、共和国逃亡等)、産業構造政策などについてまとめた。(2)第59回東北経済学会自由論題報告「戦後東ドイツ工業の復興と再編 -危機の克服か、その始まりか-」(福島大学、2005年10月22日)報告では、東ドイツ経済の分析にとって、「経済空間」という概念が有効であることを確認した。さらに、上記の断絶面に関わる計画経済システムの構築が、1950年代の経済パフォーマンスにどのような影響を与えたかについても分析した。今後の課題は、それらが「ベルリンの壁」以降に、どのように変化したかを検討することにある。政治的には、体制間の相違が一層明瞭になったが、経済的には東西間の結びつきが強化されたように見える。いまひとつの課題は、考察した東ドイツの特殊性に、戦前からのドイツ史の「重み」がかかっていたという仮説の実証である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (2件)
経済論集(秋田経済法科大学総合研究センター経済研究所) 創刊号
ページ: 39-49
The Economic Journal of Akita Keizaihoka University No.1
経済学部紀要(秋田経済法科大学) 第41号
ページ: 1-23
The Journal of Economics Department No.41
Takeshi Yuzawa (ed.), "Gaikoku Keieishi no Kisochishiki" (Basic Knowledge of Foreign business history)