研究課題
基盤研究(C)
(1)世界大恐慌を契機として主要資本主義諸国は金本位制の足枷から解き放たれ、管理通貨制のもとに財政政策と金融政策とを調和的に執り行うことで経済循環をコントロールできるとみられてきた。しかしながら、しばしば垣間見る通貨金融当局間の政策上の不調和や対立は、実はケインズ政策の登場に端を発する本質的課、題であった。銀行システムの創案以来、州政府や連邦政府の監督諸機関が分権的に銀行規制を担う仕組みを意図的に堅持してきたアメリカでは、連邦準備制度が金融政策を集権的に行使しようとしたときに、より先鋭かっ錯綜した状況を生み出すことになった。本研究は、こうした問題意識のもとにニューディール期の金融制度改革から戦後に至る時期を対象とし、連邦準備制度、財務省、州銀行監督官など通貨金融当局による規制や政策調整の実態を歴史的に考察し、連邦準備制度を軸に戦後通貨金融政策構想の形成とその帰結を歴史的に跡付けたものである。(2)本研究は、第1に、従来ケインズ政策の指導者の一人と目されてきたM・エクルズ連邦準備制度理事会議長、またエクルズの理論的アドバイザーであったラクリン・カリーに焦点をあて、彼らが一方で、草創期シカゴ学派の影響を強く受け、通貨金融政策の権限と責任を果たすべく、「全銀行統合」の代替案として「近代的」信用制度の伝統的枠組みを否定する「100%準備」構想を提起した事実を明らかにした。(3)第2に、本研究は国際通貨基金(IMF)や世界銀行を軸とする新たな戦後世界経済再建構想がアメリカの通貨金融当局間の政策調整の場である「国際通貨金融問題に関する国家諮問会議(NAC)」の創設へと結実する過程を、H・D・ホワイトに着目しつつ、一次史料から検討した。アメリカの対外援助の決定のみならず、IMFの為替平価決定やEPU創設の決定もまた、NACのなかでアメリカの国益に照らしつつ政策調整がなされたこと、またEPUの創設過程にNAC史料から分け入り、EPUがIMFの相互補完機能を果たした事実を解明した。最後に、財務省の国債管理政策から連邦準備政策を解放することへの合意、いわゆる「アコード」(1951年)が成立したことの意義と限界を再評価した。すなわち、それはNACの設置とともに連邦準備制度が1935年銀行法以来目標としてきた「市場機構の守護神」への重要な足掛かりとなったのである。
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