研究概要 |
我が国において昨今開設ラッシュの続いてきた社会人ビジネススクール教育,とりわけMBA教育について,日本企業の人材育成にとって真に有用でありうるか否かという観点から,我が国における代表的なビジネススクールと欧米のビジネススクールとのカリキュラム体系の比較検討を行った。また,東証一部上場の日本企業でMBAスクールに対しいわゆる「企業派遣」をしているいくつかの企業の人事担当者および派遣学生を対象に行ったインタビュー調査を受け,その派遣動機等の分析を行った。これらの結果,以下にまとめるような知見が明らかになった。 (1)我が国のビジネススクールにおいては,欧米のビジネススクールに於けるカリキュラム体系と比して,職能領域や方法論教育の領域で部分的に低い開講率の科目も含まれているものの,総じて世界のトップスクールに引けをとらない開講率であることが明らかになった。したがって,授業科目名そのものよりも,実際に何が教育されているかがより重要であることが明らかになった。 (2)日本の大企業がMBAスクールに企業派遣を行っている場合,その多くは,ビジネスに関する一般的で体系的な知識を修得させるためというよりも,むしろ他企業の経営状態を受講生相互のコミュニケーションを通じインフオーマルに知ったり,あるいは受講生を介して他企業との相互交流を作るための機会にしたり,といった期待感から企業派遣がなされているケースが多いことが明らかになった。これは,欧米においてはほとんど見られない動機であり,興味深い発見事実であるといえる。 (3)自企業にとって有為な人材を育てるためにMBAスクールへの派遣を行っているいくつかの日本企業においても,MBA学位を修得し数年間経ってから退職し,他企業へ転職しているケースもかなりの程度みられた。このため,これらの企業のいくつかでは,MBA派遣制度を見直す方向で検討している企業も含まれていることが明らかになった。
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