研究概要 |
本研究は,ゲーム理論の分析枠組に従いながら,戦略的提携の安定性に関するロジックを明らかにするとともに,その決定要因について実証的に解明することを目的としたものである。研究成果と課題は以下のとおりである。 1.理論的研究を進めるために戦略的提携に関する諸理論の比較を行い、分析枠組としてゲーム理論を採用した。そして,戦略的提携の安定性にとって構造的協調と動機的協調の2要因が重要であることを指摘した。 2.定量分析のプレリサーチとして,国際合弁企業2社に対してヒアリング調査を行なった。そして,戦略的提携の安定性の決定要因として重要であるとされる構造的協調や動機的協調に加えて,パートナー間の信頼が極めて重要であることを発見した。 3.日系国際合弁企業に対するアンケート調査の結果,戦略的提携の安定性にとって動機的協調のほうが構造的協調よりも大きな影響を与えていることがわかった。また,構造的協調と動機的協調のトレード・オフの関係など新たな発見がみられた。 4.戦略的提携における信頼の重要性に着目して,その影響パターンをシステム・ダイナミクスによるシミュレーションによって予測した。その結果,低信頼・高不確実性下では,パートナー関係が最も不安定になること,しかしながら,そうした状況下でもパートナー関係を維持することができた場合は,パートナー関係に関係的信頼が形成され安定的な関係が形成されることがわかった。 今後の課題としては,1.戦略的提携と組織学習効果との関係についての実証的研究を行うこと,2.データを充実させ、産業別、規模別、提携のタイプ別によるより詳細な実証研究ができるようにすること、3.多くのケース・スタディによって定量的分析結果によりリアリティを加えることの3点を指摘することができる。
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