研究概要 |
当研究はこれまで経営学分野の研究対象とされることがあまりなかった銀行業を対象として、その経営戦略や組織の観点から研究を展開しようとしたものである。 これまで日本の産業の中でも最も優秀な人材を集め、メインバンクとして長期にわたって日本企業のガバナンスを担ってきたとされる大手邦銀が、程度の差はあれ例外なくバブル経済破綻後の不良債権の処理に失敗し,生残りだけが目的の合併やリストラを通じた守りの経営を続けざるを得なくなっている。日本の銀行は国際競争力を失い、金融のグローバル化の中での敗残者となり、大きな国家的損失を招くことになった。このような歴史上まれに見る邦銀経営の失敗の問題を研究対象として、邦銀は何故経営に失敗し,経営組織や戦略のどこに問題があったのか、問題が今後二度と生じないようにするには何が必要かなどの点につき、特殊経営論としての実証的な銀行経営研究の展開を図った。 今回の研究では、このような邦銀経営の問題について、経営当事者のアンケート調査やヒアリング調査等の質的データの蓄積を通してその経営組織や戦略、経営者のリーダーシップなどの問題点を実証的に探り、これを理論化して今後の邦銀経営再生の方策を検討した。 これまでに経営学的観点からの同種の邦銀研究はほとんど見当たらず、方法論も含め先駆的な研究を進める必要があった。幸いにわが国製造業やサービス業についてはさまざまな実証研究が存在するので、これらを参考に特殊経営学としての銀行経営論の可能性を探っていくことになった。具体的に、先行研究の多い米国での研究動向をフォローし、分析の理論的枠組みを確立したうえで、個別の調査を進めた。
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