研究概要 |
本研究では,現代競争市場における管理会計の役割を,顧客分配価値の概念をもとに,以下のように分析した。 まず,顧客分配価値を,下記のように関数化された,2つの曲面(ここで,xは価格軸,yはベネフィット軸,zは顧客分配価値軸である),の交差する部分にできる曲線(ただし,m=1,n=1のときは直線になる)として定義した。 消費者行動曲面(次式で示される座標の集合体としてとらえられる) x=rcost,y=r^msimt,z=(2at)/π(0<m) 企業行動曲面(次式で示される座標の集合体としてとらえられる) x=r^nsint,y=rcost,z=(2at)/π(0<n) 現代競争市場における管理会計の役割を概念的に捉えるならば,それには,上述のmとnとを融合する役割があるといえる。管理会計の体系(システム)を,意思決定と業績評価と収益性管理として捉えるならば,現代競争市場においては,mとnとが,それらを明確にガイドすることになる。 これを具体化するために,競争市場における原価計算システムとして考案したのが,Kotlerの製品階層概念をコスト・オブジェクティブとしたコア・プロダクト原価計算である。これをベースに行った戦略的管理会計システムの構築という研究は,付加価値の分配という側面から見た,投資行動を包含する,企業経営戦略の一環としてのグループ経営,リスク管理,情報管理等に資するための意思決定と,コスト収益性分析にもとづく利益管理,業績評価とに一石を投じる研究となったと考えている。 また本研究のプロセスで,製品階層概念を形成する拡張製品(augmented product)の役割とこれを創造するマーケティング活動とを分析することを試みた。このことが,本研究で構築された戦略的管理会計システムを,公的法人等の企業以外の組織の経営に活用する研究の道を拓くこととなった。 そこで,後半の研究期間(平成17年度)の中で,医療機関・医療システムの効率化に関わる諸問題に対し,本研究の成果である戦略的管理会計の視点からアプローチするという研究も試みてみた。この当該期間における最後の研究は,本科研研究の中心的成果が,公的組織やNPOを含め,企業以外の多くの組織の健全なる事業活動の育成にも大きく貢献するという確信を,研究代表者にもたらした。
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