研究概要 |
本研究においては,知的財産の証券化に関して,(1)知的財産を活用するためのビジネス・スキームとしての証券化の妥当性の検討,(2)知的財産の証券化をいずれの法律に基づいて考えるかという法的スキームの問題,(3)知的財産の真正売買をめぐる諸問題,(4)知的財産の譲渡益課税問題および会計処理の問題,(5)知的財産の価値評価モデルなどについて検討した。 (1)に関しては,知的財産を活用するビジネス・スキームとしてはいろいろ考えられるが,最も有効なスキームは知的財産による資金調達スキームであり,それがほかならぬ知的財産の証券化であるとする点を研究で立証した。 (2)に関しては,信託法に基づく証券化のスキームおよび資産流動化法に基づく証券化のスキームを明らかにし,かかる法的スキームを前提にブランドおよび特許権を中心に検討したが,いずれも証券化が可能であり,かつ信託法に基づくスキームのほうが使い勝手がよいとの結論を得た。 (3)に関しては,知的財産の証券化を成立させるための要件は知的財産を保有している企業全体のキャッシュフローと知的財産から生じるキャッシュフローとの隔離がなされていることであることを指摘し,その要件を満たすためには,客観性および信頼性の高い知的財産の価値評価モデルが必要であるとした。 (4)に関しては,知的財産の証券化を活発化するためには,信託財産の処分から生じる譲渡益課税の問題を解決する必要があることを指摘した。また,その問題を解決するために,知的財産の譲渡を金融取引とみなし,セール・アンド・リースバック取引と同様の会計処理をすることにより,譲渡益課税が回避できる旨を提案した。 (5)に関しては,ブランドの価値評価モデルとして経済産業省モデルを,特許権の価値評価モデルとして知財評価研究会のPatVMを取り上げ,現時点では,両モデルが証券化のために最も適切な価値評価モデルであるという結論を得た。
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