研究概要 |
本研究の目的は,高齢化の進む諸地域においてその必要性が高まっている地域ケアシステムの形成に不可欠な3つのファクターを明らかにすることであった。その3つのファクターとは医師,住民,および自治体である。多くの場合,地域医療システム形成の第一歩は地域医療の理念に燃える医師によって踏み出されている。そのため本研究では,医師,看護師など医療機関・医療関係者が地域ケアシステム形成の主導的役割を担っている3つの地域において,その成立の過程と現状および今日的課題を明らかにするための調査を行った。本調査では次の3つの対象地域において調査・研究を行った。 (1)長野県武石村(現上田市) (2)新潟県大和町(現南魚沼市) (3)岐阜県久瀬村(現揖斐川町) 3つの対象地域において共通しているのは,以下のことである。 1)いずれの地域においても地域ケアシステム・地域医療の実現に強烈な使命感・理念を抱いた医師がいたということである。そうした医師の存在がいわば地域ケアシステム形成の原動力となっている。地域ケアシステム形成の主体の1つはこうした理念と行動力を持つ医師である。 2)地域住民は地域ケアシステムの形成・展開に対して,きわめて重要な役割を果たしてきた。自らの老後とりわけ介護の必要になった状態に対して明白な意見表明をし続けること,患者・要介護者の立場から必要な医療・介護サービスを的確に表現し要求する住民こそが地域ケアシステムの形成にとって不可欠なもう一方の主体である。 3)地域住民の医療問題・介護問題の解決を最重要課題のひとつと捉える行政体の存在は地域ケアシステムの形成および展開に不可欠である。自治体は,医師と住民の間に立って,あるいは医師と連携しながら住民の地域における生活を,それぞれの地域に独自な方法によって医療・介護の充実を通して実現させる努力をしてきた。 4)地域ケアシステムは今後その重要性を増していくだろう。
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